2005年10月 天敵作物

八王子北部の高月町にまとまった水田約30ha(300m×1,000m)があり、南部の小比企町にほぼ同じ面積の畑地がある。1戸当たり農地面積は、西欧が約20ha、米国が約180ha、日本が約1.2ha。高月町や小比企町の農地の規模は、西欧の約1戸分、米国の1/6戸分にすぎない。
先日東京都農業改良普及事業フォーラムに参加し、消費者や農家等のグループと一緒に小比企町のある畑作農家を訪ねた。ここは片倉城址公園から西へ連なった八王子丘陵上にあり、昔の里山が残っている。北に北野街道と湯殿川、南にみなみ野の大規模団地、東西に住宅地があり、市街化地域の中ある。1995年に都の有機農業モデル生産団地の指定を受けた。

この農家は畑が約2.5ha(内ハウス栽培が約20a)、水田が約20a、果樹園が約90aあり、野菜がトマト、ナス、キュウリ等約40品目をつくっている。販売先は生協、共同購入会、庭先直売等とのこと。
就農した1970年代は農薬や化学肥料を多用した近代農法を行っていた。そのうちに健康診断で仲間のほぼ全員の血液中から「いつしびれがきてもおかしくない」農薬が検出されて衝撃を受けた。農業の将来を考え、昔の自然な農業を取り戻したいという思いがおきて有機農法に転換することを決意したという。

堆肥は牛糞に林の落葉や消費者からの台所の生ごみ等を鋤き込んでつくり、10aの畑地に約2~3トンの割合で入れる。農作物の栽培には健康な土づくりが一番大切だ。畑に作物の苗を植えると、直ぐに雑草は生え害虫がはびこる。農薬や化学肥料を減らし、如何に雑草や病害虫と共生してゆくかが有機農業の基本だ。

人間の体にたとえると、健康な人は病気にかかりにくく、不健康な人は病気にかかりやすい。食べ物や運動、環境を整えることが人間の健康につながる。人間の体には悪玉菌と善玉菌がおりバランスが取れている。悪玉菌が増えると癌になったり病気に罹ったりする。自然界は生き物全体の共生により成り立ち、大自然界の中に人間を含めた動植物があるということ。

それでは、如何に雑草や害虫を減らすか。ハウス栽培では次のことをやっている。害虫の嫌がる天敵作物のソルゴ(コーリャンの仲間)、コブトリソウ、マリーゴールド等を育てて鋤き込み緑肥とし、そこにトマトやナスを植える。また害虫の雌のフェロモンで雄を集める対策等を行っている。この混植・混作によって、ハウス内でトマトを10年以上も栽培してきた。これは正に、畑作は連作障害が起きるという今までの常識を覆す新しい農法である。

ここでは、正に消費者と手を結び地産地消(地域生産地域消費)を地でいっている。

はやばやと 厨(くりや)にとどく 今年米 幹治