2005年2月 立春

日の光を浴びると、たとえ気温が低くてもからだが暖かいと感じる。一方、日がかげると実際の気温以上に寒く感じてしまう。暖かさの体感は、皮膚からよりも目に飛び込んでくる日の光の量で感じるような気がする。また、周りがまだ枯木や冬山などの冬景色を引きずっていても、立春を過ぎると、もう春になった気分になるのが不思議だ。

一般に春の野草は気温が急に上がっても直ぐに花を咲かせない。この時期、今日暖かくても翌日は一気寒くなることはよくある。いわゆる三寒四温だ。脆弱な草花は、早く咲きすぎると寒さにやられてしまうので、地温が上がるのをじっと待って咲くのだろうか。

立春から一週間ほど過ぎた晴れた朝、家から歩いて約15分位の所にある丘の林を切り開いた畑地に行ってみた。畑は丘の北側でなだらかに傾斜している。朝日がまだ届いていない畑は霜が降りている。丘の上の小高いところに小さな祠がある。そこからは北方面が約180度一望できる。北西の方向には高尾山の山並みが見え、前方の地平にマンションが3棟屹立している。近頃何処でも、高台に立つとマンションなどの大きな建物が視野に入ってくるようになった。

遠くの林から鳥の囀りが聞こえてくる。ギーというコゲラの声だ。近くの畑にはツグミが時々立ち止まって土塊をつついている。ムクドリもいる。ハシボソガラスもやってきた。冬を越した今頃は木の上よりも地面に獲物があるのだろう。

車が1台しかと通れない狭い小道が丘の上の林に通じている。この林に来てみると、道の片側の木々が、奥行き約10m・道添い約50m位に亘って伐られ広々している。この地域は八王子でも数少ない貴重な里山だ。この木の伐採が宅地造成の始まりでなければよいが。

車道から林の中に入ると、下草は刈られ見通しが少し良くなった。樹木の種類はコナラが殆どで、エゴノキやアカシデも混じっている。ところどころコナラの幹に沢山の枝を束ねた柴が立てかけてある。丘を降りて車道を二つ横切り、また畑道に入る。

前方から、この近くにある幼稚園の園児の一団が先生に引率されてやってくる。先生は斜面の一箇所を指差した。園児らは一斉に歓声を挙げてそこに群がった。可憐な青い花びらが瞬いている。地面に張り付いたオオイヌノフグリの一むらだ。子供達は、斜面に膝を着けて上り下りしてはしゃぎまわる。春は確実にやってきた。

のぞきこむ 園児のひたひ 犬ふぐり 幹治