22006年2月 寒木

畑の上をなみうってひくく一羽が飛んだ。スマートな姿のわりにはグェーイ、グェーイと悪声で鳴く。黒い頭に水色の長い尾、オナガだ。つづいて二羽、三羽、合わせて十羽位が梅林の中から飛び立って約30m位はなれた雑木林に入る。しばらくすると一斉にバラバラと飛び立って元の梅林に戻ってきた。林の中からは甲高いヒヨドリの叫び声がする。たまにモズの鋭い声がまじる。また、足元の藪の中からチャチャというかすかなウグイスの笹鳴きがした。今朝はよく晴れて空気が冷たい。この冬は寒い日がつづいたせいか、例年になく鳥の出る数が少ない。暖かいところを求めて南下したのだろうか。

ここは、家から歩いて約15分位の見晴らしの良い丘陵にある畑地である。丘の小高いところに3坪位の空き地があり、そこに30cm位の丈の古びた祠がある。ここからは北側に眺望が開け、南側が雑木林、西側に高尾山がみえる。畑地の真ん中には幅3m位の農道が通っている。丘陵の広さは、ざっと約10ha(約10町歩)位あるだろうか。楢・檪の雑木林の間に3ha位の畑が点在している。丘陵にはまだ大規模な住宅開発が及んでいない。

東側の雑木林の中から黄色い帽子を被った園児の一団が現れた。一人の保父さんと三人の保母さんが引率している。約15人の園児たちは、てんでんに大きな声をあげながら乾いた畑の中を駆けまわる。ところどころべったりと冬草が土に貼りついている。この園児たちは、丘の麓のお寺が経営する幼稚園からきたのだろう。わたくしは、散歩の途中に林や畑で遊んでいる園児たちをよく見かける。
  
ここの子は、街中と違って幼稚園が緑の多い丘陵の裾にあるおかげで自然に親しむことができる。日課のように外にでて、土に触ったり、野草を摘んだり、虫に触ったり、小鳥の声を聴いたり、林や野原に吹く風の音を聞いたりしている。ここにくると、わたくしの故郷の富山を思い出す。家は町中にあったが、少年のころは、近くの川や田んぼで泥んこになって日が暮れるまでよく遊んだものだ。

「日本列島は、かつてない寒波に覆われている。昨年12月の平均気温が東日本、西日本とも観測史上最低となり、日本海側では記録的な豪雪が続いている。北極側から強い寒気が南下しているのが直接の原因だが、専門家は、その背後には地球規模の大気循環の乱れがあると指摘する。」
読売新聞1/7

田舎で家にいたころ雪がふると、まず家の前の雪かきをする。大雪になると何度か屋根にあがり雪おろしをした。シャベルですくって道に投げ、その雪を川に運んで流す。大仕事だ。故郷の富山では昨年の暮から3度も屋根雪を降ろしたという。北陸の雪は重い。早起きして雪かきを始めると、段々に隣近所から人がでて大勢になる。

寒木の わきより園児 あらはるる 幹治