2006年6月 春雷

この春から知人の畑を少し借りて、週一度位畑仕事をするようになった。そこは家から大分離れていて、都立多摩丘陵自然公園の中山の高台にある。野猿街道から農道に入り曲がりくねった坂を上ると一面に畑が開けている。畑地からは北面に下柚木の雑木林が見え、南面には南大沢の高層ビル群を遠望することができる。

知人は素性の分かった野菜を食べたいとして、15年前から農地を借りて有機農法で野菜をつくっている。昨年末、仲間と野菜づくりをするため新たに約1,000㎡(約1反=300坪)位の畑を借り入れた。この畑は5~6年位放置されていたために自然に帰り、草木の根や種が土の中に沢山残っている。知人は一冬かかかってこれら根を取り除き、肥料を入れて鋤きこみ畑土づくりをした。わたくしが初めてその畑にいったのは3月22日、まだうすら寒く、畑土がむき出しになりわずかにスギナ・ナズナ・タンポポなどが生えている。既に畑の区割りが決まっていて、野菜を植えるだけになっていた。

畑土を踏むと意外に軟らかく、土の香りが胸いっぱいにひろがった。まず、畑土を鍬で起こして均し畝をつくる。家のプランターで野菜を植えたことはあるが、鍬や鋤簾(じょれん)で本格的に畑作業を行ったのは今回が始めてである。鍬や鋤簾の使い方から教わった。わずかな畑でも、鍬をふるって土を起こす作業は結構身にこたえる。農業フイルムの破片の除去、草取り、石灰撒きや肥料入れ、堆肥を運んできて畑に鋤こむなど、手作業の仕事はでいくらでもある。小半日の畑作業で、体の節々に筋肉痛が走る。4月25日。この日は草取りを行う。スギナが目立つ。雑草の種類を特定できない。

スギナはトクサ科の多年生難防除雑草であり,特に寒地・寒冷地で発生が多い。その特 徴は地上部の生育量に比べて圧倒的に多い地下部器官の量と1m以上にも達する分布の 深さ,そして一度侵入するとその防除の難しさである。繁殖は胞子と地下茎で行われる。
早春に胞子茎(ツクシ)が発生し,先端の胞子穂より胞子が放出される。胞子は4本の弾 糸をもち,風で遠くまで拡散し,土壌の撹乱のない湿ったところでは定着する可能性があ る 。 地下部繁殖器官には細長い根茎と球状の塊茎とがあり,両者はそれぞれ異なる生態的 特徴をもっている。石灰の散布は酸度の矯正が競合している作物や他の雑草の生育を促 進し,競合の結果としてスギナの生育が抑制されるのであって,スギナそれ自身の生育を抑 制する効 果はない。                      
 (畑雑草研究室webより抜粋)

昼ごろになって、にわかに雲が激しく動き出しあたりが急に暗くなった。ぽつぽつと雨粒が降ってくる。風が出てきた。遠くで雷鳴がする。いきなり近くの雑木林に落雷する。みんなで手早く道具をかたづけ、身をかがめるようにして急いで丘を降りる。夕方、家に帰ってみると、家の植えた茄子の葉が雹(ひょう)にうたれて破れていた。

春雷の さつてみどりの ふかみけり 幹治