2007年2月 霜焼け
 
寒に入ったというのに早春のような天気がつづいている。2005年12月から2006年3月にかけて昨年の冬は記録的な豪雪だった。今年の冬は、夜間霜が降りることがあっても日中の気温が10℃前後と高い日が多い。1月6日、まる1日台風期のような雨が降った。正月三箇日に降る雪や雨は、「御下がり」といい一般的には雪がちらつく程度で正月気分を引き立たせるものである。

1月9日朝、2週間ぶりに畑にゆく。小春日のような陽気だ。さすがに日の当たっていない畑の畝間には2~3㌢位の霜が立ち上がっている。畑の隣の林はすっかり葉を落とし、林間が明るい。昨年11月にあれほど土を覆っていた落葉はどこに吹かれていってしまったものか、落葉のかさが減ってところどころ土が顔をだしている。

日本の九州南端から北海道の北端の緯度は、ほぼ北緯30度から45度以内にある。水分条件と土壌で大巾に変動するが、広葉樹と針葉樹に積もる落葉量は1年/1ha(10000㎡)当たり4~6㌧という調査結果ある。
小池良:生物圏物質循環学、北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション

これは1年/1㎡当たり0.4kg~0.6kgに相当。仮に落葉の質量を水と同じとすると、1㎥の水は1000kg(1㌧)になることから、1m(高さ)年:1000kg=Xm年:(0.4~0.6)kg、X=(0.4~0.6)kg/1000kg、ゆえにX=(0.4~0.6)/1000、100年では4~6㎝。仮に約1/4が雨風で流されたとすると、100年で厚さ1~1.5㎝の落葉量になる。

土の中には土壌微生物がいる。落葉は微生物に棲み処を与える。落葉に適当な水分が含まれると、これを餌にする微生物は、酵素を吸って落葉を消化・分解して植物が養分を吸収しやすい形にする。伸びてきた植物の根は微生物の分泌液を吸収し、逆に根は自らの分泌液を微生物に供給。共生・循環して森林を育てている。養分を含んだ水は田んぼに導かれ水田の水稲の肥料になる。海に入った養分を含んだ水はプランクトンの餌になり、それを魚が食べる。まさに落葉を通して自然の物質循環がおこなわれている。

春菊の畝の白色マルチシート覆いを外し、上部が摘まれた春菊の太い茎から横に生えた柔らかい茎を摘む。ところどころ茎の葉先が黒くなってちぢれている部分がある。これは霜にあたって霜焼けになったものとのことである。春菊の葉先を火にあぶるとこれと同じようになる。凍傷も火傷(やけど)も同じ症状のようだ。少年のころ、ふるさとでは冬場に川水で洗濯などの水仕事をしていた母親たちの手の甲が、霜焼けとあかぎれでひび割れし赤くむくんでいたものだった。

黒のマルチシートの間から、11月に播いたほうれん草が青々として約5㎝ほどの葉を広げて育っている。ほうれん草の種をじゃが芋の収穫後8月に播いたが、夏から秋の高温のせいかうまく育たなかった。原産が中央アジアとのことなので、生育期に温度を下げる工夫が必要のようだ。

霜焼けの 春菊の葉の ちぢれをり 幹治