2007年4月 レタス苗

八王子では、梅はもうどこも満開だ。3月6日啓蟄の日に、北陸地方で雪吊りを外したニュースがあり、その4日後に雪が降った。金沢の兼六園では、外した雪吊りに降った雪を棒で落としている光景をテレビが映し出した。全国各地で、温暖化の影響で花や野菜が育ち過ぎ、半月から1ヶ月ほど生育が早まっていると報じている。地球温暖化は確実に進行しているようだ。ある予報官は、温暖化が二歩進んで一歩後退していると表現した。一昨年の寒波と今年の暖冬をみていると、これが実感として伝わってくる。

昨年3月21日に、中山の畑ではじゃが芋とレタスの植え付けをした。今年は、例年より2週間から3週間早めて植え付けをしようと知人が計画している。3月6日、直敷きとトンネルで二重にして保温したパオパオからレタスの苗を取り出し、ミニポットに一つ一つ移植する作業を行う。

購入した苗づくり用培養土、落葉でつくった堆肥と土とをよく混ぜ合わせミニポットに入れる培養土をつくる。左手にミニポットを持ち、右手の指先でその土を約1/3位入れ、レタス苗を一つ摘んでポットの真ん中に据える。左手の指で苗の茎を押さえながら、右手の指でその周りに土を加え、最後に両手の指先で苗の茎をしっかり固定する。この作業を二人で行い、準備も入れて約3時間弱で200個のミニポット入りの苗をつくった。一人で1個つくるのに約2分弱かかった勘定になる。まだこれで終わった訳ではない。苗に散水をしてパオパオに戻し、2週間位かけて苗を育てなければならない。種を播いて苗になるまで40日あまりを要している。

アメリカでは、1940年代から肉の摂取が増えるにしたがい生野菜とくにレタスの需要が高まった。広大な土地を使い化学肥料や農薬を多用した大規模農法が普及した。収穫したレタスは呼吸をしているので、そのまま段ボール箱に入れて輸送すると箱の中の温度が40℃前後まで上がることがある。そこで生産したレタスを大都市に輸送するため、貨車に氷を詰めてレタスの積荷の周りの温度を下げて輸送や保存に耐えるようにした。これにより鮮度を保って長期間の出荷調整可能になった。これを追って日本では、1963年、長野県の農協はレタスの真空冷却(減圧で水分を蒸発させて冷却)による予冷技術を導入した。東京オリンピックのころから急激に高まったレタスの需要に応じて、予冷技術と大型保冷車とを使って、全国への輸送が可能になった。今では、レタスの年間出荷量の7割ほどが予冷出荷されている。
Web:野菜図鑑他

ジェームス・ディーン主演の名画「エデンの東」に、貨車で満載したレタスを遠く東部に輸送するシーンがあった。地平線までのレタス畑、レタスを積んだ貨車が事故で立ち往生中に氷が融け貨車から水が流れだしレタスが腐るシーンが印象的だった。

1962年、レイチェル・カーソンが「沈黙の春」を出版した。DDTを始めとする農薬などの化学物質の危険性を、鳥達が鳴かなくなった春という出来事を通し訴えた作品。これが化学肥料や農薬使用の大規模農法による自然破壊を告発した最初の書である。

指先に かくれるほどの レタス苗 幹治