2008年11月サツマイモ掘り

ちいさな手が蔓のまわりの土をちいさなシャベルで少しづつ掻き出す。蔓の根っこにサツマイモの紅色の肩が現れた。そこから先は若いお父さんが軍手をした指先で芋のまわりの土を注意深く取り除いてゆく。乱暴に芋の肌をこすると簡単に表皮が剥けて白い肌がでる。だんだんに掘り下げてゆき、サツマイモの全身の3/4位のところで両手でつかみ引き抜く。サツマイモの大きさは様々だ。ほとんどは細長いが、なかには丸いものもある。地中に真っすぐにのびていたり、斜めに横たわっていたりしている。サツマイモは根っこのまわり2~3個の塊根がつく。今回のサツマイモの種類は紅アズマだ。

きょうは体育の日、菜園クラブの収穫祭だ。朝からクラブのメンバーが畑に集まる。2・3歳位から小学校高学年までの子供を引き連れた4・5組の若夫婦から、いつもは平日畑にくる小父さんや小母さん達がやってきた。畑は子供たちの歓声で一気ににぎやかになる。あちこちに走りだすもの、土をつかんで放り投げるもの。若い親たちは笑って子供たちを畑に放ち遊ばせている。

この様子を見ていると、約30年前のわたくしの子供がまだ小さかった頃、家族がいつも一緒に遊んで過ごしていたことを思い出した。その頃は家にあるわずかな庭で、野菜や実のなる木を育てて楽しんだ。子供はいつも砂場で泥にまみれて遊んでいた。近所に雑木林や廃屋があり、そこで低学年から高学年までの子供たちが一緒になって基地をつくったり、野球をしたりして暗くなるまで遊んでいたものだった。

収穫したサツマイモをあつめて小屋に運び、バケツに汲んだ雨水で大雑把に泥を落として洗う。泥水の中からサツマイモの鮮やかな紫がかった紅色の肌が現われる。これらを簾のうえに広げてしばらく日に干す。乾いたサツマイモを集めて箱につみ少しはなれた車で市民センターの会場に運ぶ。センターには既に数人が到着している。女性たちはサツマイモをたわしで洗い、水を張った大なべに入れて茹でる。今日は茹でたサツマイモで昼食だ。みんな揃ったところで会が始まる。

まず、会の代表から畑の規約(申し合わせ事項)の説明がある。畑に来る人がこのように一同に会する機会は少ない。菜園クラブは代表が地主から約2反の畑を借りている。その畑を約30人でそれぞれ3坪・6坪・9坪等の区画にして作物を作っている。みんなが使う共同で使う部分は水タンク・農具小屋・落葉を積んだ堆肥槽・畑道などだ。共同で使う部分はみんなで力を出し合って気持ちよく使おうということを確認した。

畑仕事の半分は雑草取りが占める。雑草は畑一面に生える。各自は自分の畑の畝の雑草取りはたいがい行うが、共同で使う畑道などはあと回しになることが多い。特に7月・8月の畑の雑草の繁茂は凄まじく、雑草取りが追いつかない。わたくしは、8月に週2日雑草取りを手伝った。これをみんなでやろうという訳だ。そのほか、ゴミなどの始末などがある。

むかしの村には結いという共同作業があった。家の事情にかかわらず各戸から1名人をだして合議し、共同で水利管理・道路普請などを行なって地域社会をまもった。水田稲作は一人ではできない。村全体の総合力を結集しないと成り立たなかった。

昔の村社会の共同作業を行った仕組みが、そのまま骨肉となって官庁や会社に引き継がれ、総合力を発揮して経済大国日本になった原動力といわれている。

菜園クラブも同様に小さな村社会と考えればよい。この村社会はまだまだ全員が集まって話し合い雑草取りの共同作業などを行うまでにはいっていない。

この後、ブック・トーク「サツマイモ」と称して「八王子に学校図書館を育てる会」の有志の方から、幼児から、小学生、中学生、高校生、大人向けに図書館にある本の紹介があった。絵本を紙芝居のようにした語りから、高学年向けの本の朗読まで巧みな話術でみんなを笑わせたり感心させたりした。「育てる会」は図書館の本を借り出して幼児から本に親しむことを進めているボランティアである。おわりの方に紹介されたさつまいもの本17冊を掲載する。今回、子供から大人までサツマイモ掘りをしたので、サツマイモの話と本の紹介は会の趣旨にびったり適ったもので非常に良かったと思う。

茹であがったサツマイモに塩をつけて皿に分け各テーブル配られた。代表から、「サツマイモさん有り難う」という言葉を合図に、みんながサツマイモをとりあげめいめい皮をむいたりして食べた。

食べ終わってから、会員の中に手品をやっている人がいて子供向けの手品を披露してくれた。これは長年練習を積んだ見事なものだった。前列にいた小学校1年生位の子供からの遠慮のない指摘に、思わず「君がいるとやりにくいよ。」などといってみんなが爆笑する場面もあった。
最後に代表から、秋・冬の畑しごとなどの話があってお開きとなった。

ひきはがし たぐりよせゐる 芋の蔓 幹治

ヒトは食物を通して土を食べている。土がないと作物はつくれない。全ての生きものは土から生まれてきたということができる。土がないとヒトを含めて生きものは生きてゆけない。だから、母なる大地を汚してはいけないということだ。小さい時から、頭ばかりでなく手足で土に触って肌で土に親しむことは非常に大切だ。


紅アズマ-現在の主要品種の一つで特に関東地方で人気があります。皮が華やかな紅色で、中身が黄色。甘味が強く、ホクホクとしていて繊維質が少ない。最近の市場の要求に総て合致しています。細長いものが多く、長さは15cm程度。

高系14号-紅アズマと並ぶ主要品種でずんぐりとしています。皮は赤褐色です。甘味が強く繊維質が少ない。7月から出回ります。1945年に高知県で育成。鳴門金時などの枝変わり(品種の中の細かい品種)も多い。

紅赤-金時とも呼ばれる美味で有名な在来種。皮は華やかな紅色で中身は生の時は白っぽいのですが加熱によって華やかな黄色になります。1898年に埼玉県川越市で山田いちさんという方が発見したという話で、川越の特産です。粉質ですが適度に粘りもあるので、キントンに最適です。また火がとおるのが早いので天ぷらにもむいています。

黄金センガン-皮は淡い茶褐色で中身はごく薄い黄色です。鹿児島などで栽培されていて、でんぷん採取用や焼酎の原料にもされますが食味もいいです。

紫唐芋-沖縄、種子島の特産で皮は淡い茶褐色で、中身は紫色。加熱すると華やかに発色します。そのまま食べても美味しい他、和菓子の色づけなどに使われます。
さつまいも:Web食材事典



ブックトーク「サツマイモ」
『おおきなおおきなおいも』 赤羽末吉さく・え 福音館
『サツマイモの絵本』 たけだひでゆき 編 農文協
『紅赤ものがたり』 青木雅子 けやき書房
『その時歴史が動いた 9』 NHK取材班 編 KTC中央出版
『空を飛んださつまいも』 新開ゆり子 金の星社
『ブタとさつまいも』 梅埼昌裕 小峰書店
『向田邦子をめぐる17の物語』 相庭泰志 構成 KKベストセラーズ
以上は今日紹介した本です。

今日紹介はしませんでしたが…
『じゃがいもとさつまいも-飢饉をすくった食べもの』 遠藤一夫 作 帆足次郎 絵 岩崎書店
『ががくのとも さつまいも』 小宮山洋男 作 福音館書店
『調べて食べて元気なからだ イモ類』 吉田企世子・越智直実 著 文渓社
『いも』 麻生健 指導 久保秀一・壇沙萌 写真 フレーベル館
『おいもの本』 河野雅子 グラフ社
『半分のさつまいも』 海老名曹葉子 くもん出版
『Fさつまいも史話-コロンブスから芋地蔵まで』 木村三千人 創風社出版
『ものと人間の文化史 さつまいも』 坂井健吉 法政大学出版局
『サツマイモのきた道』 小林仁 古今書院
『向田邦子の手料理』 監修と料理制作 向田和子 講談社
八王子に学校図書館を育てる会