2015年10月「2015.9.19」は新たな始まりである

 9月に入って連日行われた安保法案強行反対・国会大包囲に、9月11日(金)、9月14日(月)参加した。
「民主主義とはなんだ」「これだ」の連呼、「戦争法案、絶対反対」、「安倍はやめろ」の唱和。シールズの学生達が声を上げると、大勢の老若男女が唱和する。誰にも強制されない普通の人たちが、止むにやまれず続々と国会に向かう。
 残念ながら、2015.9.19未明、参院にて安全保障関連法案強行採決の結果、成立した。

 わたくしは、先にwebsiteに次の小文を載せ、この結果にならないように警告していた。
 「安全保障法案法制化強行を阻止し、日本国憲法体制の崩壊をくい止めよう」
-「ワイマール・デモクラシーの悲劇」の日本における今日的意義-
民主主義の衰退がもたらしたドイツの「ワイマール・デモクラシーの悲劇」を、この日本で再び繰り返えさせてはならない。
 http://www.oryza101.com/html/annzenn.html

 ヒットラーは民主的なワイマール憲法の手続きにより、議会に「全権授権法」を通し、憲法を有名無実にして独裁政治へと突き進んだ。
一方、安倍氏一派は、同様に民主的な日本国憲法の手続きにより解釈改憲の無法を強行し、国民主権を踏みにじり、なんでもありの法律を両院で通した。この政治手法はヒットラーと同じであり、これによって日本国憲法体制は崩壊の瀬戸際にきている。

 安倍首相他の説明が先と後では食い違い、矛盾が噴出する。質問にはまともに答えず時間かせぎをする。その挙句が19日未明の参院強行採決だった。こんな政権には、とても今後の日本の未来を託するとはできない。

 2014.12.14総選挙は戦後2番目の低投票率になり、有権者の約半分(約47%)が棄権した。その結果、自公政権与党は有権者の17%で、2/3以上(68.6%)の議席を獲得した。

 衆議院は小選挙区比例代表並立制の選挙制度をとっており、小選挙区制度は、過半数に達していない「民意の少数派」であっても「議席の多数派」を得ることを可能とする、偏った民意が極端に反映させてしまう制度である。選挙キャッチコピーでは、自民党は党是の憲法改正を選挙争点にせず、いわゆるアベノミクス「景気回復、この道しかない」、公明党は「いまこそ軽減税率実現へ」とした。

 今回の安全保障関連法案(以下安保法案)は、集団的自衛権を解釈改憲により行えるようにするもので、日本国憲法制定70年目にして国の防衛政策の大転換となるものである。本来、先の総選挙で最大争点にすべき公約だった。国民は「景気の浮揚期待」に目を奪われ、政権与党の平和憲法を危うくする底意を見抜くことができなかった。いわば後の祭り、だまされたのである。

 「ひどい政府は、愚かな民がつくる」 福沢諭吉 学問のすすめ1872

 政権与党は、衆院の2/3を超える圧倒的な議員数を背景に、問答無用の横暴の限りを尽くして安保法案成立させた。これは安倍首相のいう「決めるときには決めることが民主主義だ」ということを可能とした議会制民主主義の弊害である。
 今回の憲法の根幹を変えるような防衛事項の変更は、一内閣の法律の立法化で実現させるものではなく、本来憲法を改正して行うべきものだ。これは立憲主義の破壊、法的クーデターといわれた暴挙だったのである。

 60年安保と70年安保のデモデモは先鋭化した一部学生や労組の動員が主体だった。今回の戦争法案反対デモは特定の団体から動員されはものではなかった。戦争法案の危険性を空気感覚で嗅ぎ取ったシールズの若者たちやママたち、大勢の老若男女が自発的に街中から湧き出て、不当な政治権力者に対しデモを通じてあらゆる表現でアピールした。※

 「2015.9.19」は新たな始まりである
 シールズのある学生は、国会大包囲デモの集会で憲法の前文を読み上げ、「日本国憲法は誰からも押し付けられたものではない。これは、俺たちの言葉なんだよ」と叫んだ。平和憲法の趣旨がしっかりと若者に受け継がれていることを感じる。
 安倍政権の功績は、日本国民に日本国憲法の立憲主義、民主主義を目覚めさせてくれた。
救いは、若者たちが立ち上がってくれた。弁護士、憲法学者たちも黙ってはいない。

 ※カウンターデモクラシーの歴史的意義って?(選挙補完するもう一つの民主制)
 カウンターデモクラシーという言葉は、2006年にフランスの歴史学者ピエール・ロザンヴァロン氏が出した著書「コントル・デモクラシー」に由来します。「コントル」は仏語で「○○に対して」という意味で、英語では「カウンター」に相当します。

 カウンターデモクラシーについて雑誌に論文を寄稿したこともある明治大学法科大学院の辻村みよ子教授(憲法学)によると、選挙による代表民主制に対し、様々な方法で民意を表明する「もう一つ」の民主制を指します。選挙と選挙の間に国民投票やデモなどを通じて政治を監視したり、批判したりして民意を反映させ、代表民主制を補完するという構図です。

 国政に対して選挙のほかに民意を反映させる仕組みは、特定の事案について賛否を問う国民投票などとして多くの先進諸国で導入済み。ただ、日本では改憲以外のテーマで国民投票は制度化されておらず、カウンターデモクラシーはデモ活動やインターネットを利用した意思表示などに頼らざるを得ないのが現状です。

 近年、カウンターデモクラシーが注目されている背景に、政治が社会の意見を正確に反映していないとの世界各地での不信の高まりがあります。日本では昨年の衆院選の小選挙区で48%の得票率だった自民党が4分の3の議席を獲得。一昨年の参院選では「一票の格差」が最大で4・77倍に上りました。

 こうした状況のもと、例えば安保法案をめぐって、学生団体「SEALDs(シールズ)」などの若者らがデモや集会に参加し、研究者や俳優らが声を上げるなど多様な層の人々に活動が広がりました。辻村教授は「日本でもカウンターデモクラシーがようやく始まったと感じる」と話します。

 一方、課題もあります。欧米諸国と違って民意を反映する制度が少ないため、結局は選挙で結果を出すことが必要です。今回のような市民参加の高まりを直接国政に反映させようとするなら、来年の参院選まで熱気を持続し、裁判や地方選挙、SNSなどあらゆる手段を使って意思を示し続けることが鍵になりそうです。
 朝日新聞2015.9.28http://digital.asahi.com/articles/DA3S11986880.html